5月14日の聾学校、午後からのフリーバッティングをネット裏で眺めていた。
ピッチャーが投げた球をバッターがセンターにフライを打ち上げそれをセンターが捕球する。
サードゴロが飛ぶ。サードが捕球して素早い動きでファーストに送球する。
この光景を幾度となく見る。
いたって普通のプレーである。
この普通のプレーを眺めて、私が午前中に下した判断は間違っていないと確信した。
私はこの普通に野球をしている光景を見るのに十年と数か月の歳月を要した。
それくらい普通に野球をするということは難しいことなのである。
選手個々のレベル、スタッフのレベル、保護者のモチベーション、私の指導者としてのレベル・・・
いろいろな要素が重なり合った上で、この光景が生まれた。
このタイミングで次に進む道は二つしかない。
一つ目の道は、このまま勝てる野球を押し進め、きぬかけ杯で確実に優勝を狙う道。
もう一つの道は、いったん勝つ野球から個々のレベルを上げる野球に転じ、圧倒的なポテンシャルの差できぬかけ杯をぶっちぎる道。
私は後者を選択することにした。
なぜそう思ったのか自分でも分からない。直感である。
その答えは半年後に出る。
成功体験を与えることを放棄したわけではない。
個々のレベルに応じ、よりレベルの高い成功体験を与えることを選択させていただいた。
TKドラゴンズより強いチームはたくさんある。
週に何回も練習すればそれなりに毎年強いチームができる。
しかし、それは野球に慣れているだけでレベルが高いわけではない。
分かりにくいかもしれないが、慣れるのとレベルを上げるのは違う。
慣れるというのは知らない間に体が反応することを言い、レベルが上がると言うのは理解して体を動かすことを言うのだと私は思っている。
今のTKドラゴンズのAチームの選手はかなり細かいことを理解できるようになっている。
そして理解しようとする姿勢を持つようになってくれている。
もっと高度な要求がほしいとさえ思ってくれているのだ。
こんなチャンスはそうそうあるものではない。
やっと本題に入る。
次のステップに入るにあたり、フィールディングを向上させるという決断をした。
フィールディングという言葉はよく耳にする。
要するに個々の守備力である。
守備には捕球と送球があり、捕球は「グラブさばき」、送球は「スローイング」という言葉で表現される。
では、フィールディングとは何だ?
ニュアンスで言うと守備のセンスだ。
普通、野球を指導するうえでフィールディングを向上させるという練習はあまり行わない。
一番よく行われるのが「捕球」の練習である。
個人ノックがそうである。
個人ノックは捕球を連続で行いスローイングはまずしない。
理由は、スローイングまでしていたら時間が恐ろしくかかるしノックを受けている選手の負担が大きいからである。
他にも、個人ノックの方が見栄えが良い、練習をしたという感じがする、ノッカーが気持ち良い、など・・・
一般的にフィールディングの良し悪しは身についているもの生まれ持ってのセンスという考え方が多く、ここをいじる指導者は少ない。
バッティングにしても同様で、バッティングフォームはいじってもミート力を上げる指導はしない。
はっきり言えば一番難しくて成果が見えにくいので、指導する側が躊躇するのだ。
センスをいじることは細心の注意が必要となる。
なぜなら人によって骨格や筋肉、体のバランスが違うため選手個々で体の動かし方が違うからなのである。
何度も言うが、常にここまでの指導ができるわけではない。
選手側の受け入れ準備が整っていなければ寝耳に水なのである。
指導者の多くがこの状態を待ち望んでいるのだ。
待ち望んでいるということに関してはいろいろな問題があり、また折に触れ話すことにする。
フィールディングに話をもどす。
しかし、本当にフィールディングは持って生まれたものなのだろうか。
これは指導者によって様々な理論があると思う。
私は原理を教えて理解できるならフィールディングは向上すると思っている。
横っ飛びで捕球しアウトにするいわゆるファインプレーより、広い守備範囲を確保したポジショニングから緩い打球でも間一髪でアウトにする方がより実践的なのだ。
しかし、それを個々のフィールディングに任せて良いものなのだろうか。
高校、大学、社会人、プロと進む過程でフィールディングの良い選手が上へ上がっていく。
野球のレベルが上がるにつれ、守備範囲が広がる。これに対応できる選手が次のフィールドへ進んでいく。
私は少年野球のTKドラゴンズAチームでフィールディングはセンスだというその常識を覆してやろうと思っている。
少年野球の一つのチームのほとんどのレギュラー選手がフィールディングを向上させたなら、他のどのチームであれ手も足も出ないだろう。
練習の内容は詳しくは申し上げられないが、半年後に結果が出れば成功例としてお教えしたいと思う。
どんな内容でフィールディングを向上させようと思っているのか知りたい方は練習を見に来ていただければご覧いただける。
午後のフリーバッティングを見て確信したのである。
もっと上を目指させようと。
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