叱らないから上達する!ひとり一人が輝く少年野球チーム!

~消極的から積極的への大転換~

先日のきぬかけ杯で、3年ぶりの優勝に輝いたTKドラゴンズ。

今シーズンが始まった頃から見れば、選手の加入やポジションや打順の入れ替わりを経て、実にたくましいチームへと成長してきています。

きぬかけ杯を目前にして、私はある選手のメンタルトレーニングを行うことにしました。この選手が自分の持っている力を出してくれることがきぬかけ杯の優勝につながるし、シーズン後半の戦いやこの選手の将来にも大きく影響すると感じたからなのです。

実はまだトレーニングの途中ではありますが、良い結果を出してくれています。

以前に「機会があればお話ししたい」とブログに書きました。丁度いい機会ですので、私がこの選手にどのような理念のもとでどのような指導をしたのか、少しお話したいと思います。

 

尚、今から記す内容には、私が数十年に渡り野球に携わってきた経験から感じることや私の自論がほぼ全てであること、対象となる選手がある程度以上の野球知識と技術を持っているという前提であることをご了承ください。

 

では、本題に入ります。

長文になります。興味のある方はご一読を。

 

野球には何をするにも失敗がついて回ります。野球はスポーツの中でも失敗の多いスポーツなのです。

守っていればエラーもするし、走塁すればアウトにもなるし、投げていれば打たれもするし、打席に入れば凡打にもなるし三振もする。

これが野球なのです。

その失敗をいちいち責めることは無意味なことですし、練習すれば失敗は減ります。しかし失敗がなくなることはありません。

それが野球なのです。

私は、「野球は失敗の多いスポーツだからこそ、失敗に対する考え方が重要なスポーツである」と思っています。

 

私は、野球には選手にとってプラスになる失敗と、マイナスになる失敗があると思っています。

プラスになる失敗とは、今後の糧となる失敗であり、マイナスになる失敗とは、今後のプレーに悪い影響が出る失敗ということです。

 

プラスになる失敗とは、その根底に、野手ならば「自分がアウトにしてみせる」、打者ならば「自分が打ってみせる」、投手ならば「自分が抑えてみせる」というように、「自分が〇〇してみせる」という考えがあるプレーです。

この考え方の特徴は、加点法だということです。良い動きをすれば「自分はこんなこともできた」という得点が加算されますので、自分から仕掛けて行く積極的なプレーを生み出します。例えこの結果がエラーになったとしても、凡打になったとしても、打たれたとしても、それは次へのステップにつながります。

 

なぜでしょう・・・

 

「自分が〇〇してみせる」という考えのもと積極的に行ったプレーで失敗した場合、自分がやりたいと思ってもできなかったわけですから、「悔しい」➡「なぜできなかったんだろう」➡「次は成功してやる」というように、思い通りにならなかった悔しさやが向上心に転換されます。

 

なので・・・

 

この考え方で行ったプレーでの失敗は、それによって積極性を失うこともありませんし、向上心が芽生えるという点ではむしろ選手にとっては必要不可欠な失敗だと言えるのです。

これは選手自身にもプラスになりますし、この選手が所属しているチームにとっても同一選手の能力が上がっていくわけですから、当然プラスになるわけです。

 

 

一方、マイナスになる失敗とは、その根底に、野手ならば「アウトにしなければならない」、打者ならば「打たなければならない」、投手ならば「抑えなければならない」というように「自分が〇〇しなければならない」という考えがあるプレーです。

この考えの特徴は減点法だということです。失敗すると自分の中の理想像から減点されていきますので、無意識に冒険を避ける消極的なプレーしか生み出さないのです。この結果がエラーになったり、凡打になったり、打たれたりしてしまうと、より一層消極的なプレーしかできなくなるのです。

 

なぜでしょう・・・

 

「自分が〇〇しなければならない」ということは自分に完璧を求めることになるため、自分で自分にかけなくても良いプレッシャーをかけてしまうわけです。

これは、真面目な選手や責任感が強い選手、あるいは優等生でありたいと思っている選手に多く見られる傾向です。

この考えで失敗した場合、しなくてはいけないことができなかったわけですから、「失敗してしまった」➡「もう失敗できない」➡「プレーするのが怖い」というように積極的なプレーを避ける方向に進んでしまいます。

 

なので・・・

 

この考え方で行ったプレーでの失敗は、失敗すればするほど消極的になり、体が思い通りに動かなくなってしまうことが多いのです。この症状が強く出るのが「イップス」なのだろうと私は感じています。

これは、選手にとっても、チームにとっても明らかにマイナスです。

 

では、「自分が〇〇しなければならない」という考えかたを「自分が〇〇してみせる」という考え方に転換する方法はないのでしょうか。

 

私はあると思っています。

 

まずその第一歩は「自分は周りの選手より飛びぬけて上手い」というイメージを強く持つことです。

 

例えば、皆さんが野球を始めたばかりの子どもとキャッチボールをするのと、プロや社会人の現役選手とキャッチボールをするのでは、緊張の度合いが違いますよねぇ。

野球を始めたばかりの子どもとキャッチボールをするときは、「こうやって投げるんや」「こうやって捕るんや」と自分を手本にして見せますね。この状況で実力が出せない人はいません。平常心でしかも上から目線でプレーしている状態です。

現役選手とキャッチボールをすると緊張してしまうのは、自分より上手い選手とキャッチボールをすると思うからです。下手だと思われたくないとか、暴投はしたくないとか・・・どうです?知らない間に減点法になっていませんか?

 

これはイメージトレーニングなんですが、「自分はできる」「自分は一番上手い」ということを強く思うことで本来の力を発揮できるようになります。

 

「しなければならない」という考え方には、「叱られたくない」とか「実力より下に評価されたくない」などのマイナスのイメージが強く入っています。

しかし「自分はできる」「自分は一番上手い」と強く思うことでプラスのイメージが強くなり、安心した状態で積極的なプレーを生み出します。

こうして一つ一つのプレーを積み重ねることで、平常心でプレーすることができるようになります。

 

二歩目のステップとして「自分が活躍したい」という欲を強く持つことです。

 

ファインプレーをして大歓声を浴びたい、逆転ホームランを打って大歓声を浴びたい、ピンチで三振を奪って大歓声を浴びたいなどの欲望を強く持つことで、その欲を満たすための向上心が芽生えます。向上心は自分のためにのみ存在します。人は自分の欲が満たされるための努力なら苦にならないものです。

こうして欲を満たすための努力を自然に続けていくと、知らない間に自分の技術は上がっていきます。

 

そして最後のステップで「自分が〇〇してみせる」という努力に裏打ちされた強い自信を得ることで、積極的なプレーへの大転換が完結します。

 

ここまでくれば、同じレベルや少し上のレベルの選手の中でも向上心を持って更に成長することができるのです。

 

今メンタルトレーニングをしている途中の一人の選手には、「お前は本当に上手い。だから他の誰よりも自分が一番上手いと思ってグランドに立て」と言ってあります。

もし彼が本当に強い自信を持てるようになった時、彼の仕草でそれは分かります。

それはまた、機会があればお話ししますが、私は彼がその仕草をするところを「卒団するまでに見られたら嬉しいな」と思っています。中学になってからでも良いんですけどね。楽しみです。