天一杯では1回戦で敗退した。
勝利チームの監督が敗戦チームの中から活躍した選手を選出し、その選手に敢闘賞の楯が贈られる。
TKドラゴンズから敢闘賞として選ばれたのはセカンドの立石だった。
選出理由は「キレキレの動き」ということである。
立石は本来外野手である。
しかし、私は彼の声が内野にどうしても欲しかったので今シーズンからセカンドにコンバートした。
大きな声がよどみなく出る。
どうでもいい声ではなく、その場に合った声を出すのだ。
相手ベンチのすぐ前にセカンドの立石が守っていた。
おそらく彼の声や動きは相手ベンチからすれば際立って見えたと思う。
場面によって声を出せるというのは、場面によってどんな動きをすればいいのかを分かっているということ。
野球経験者なら「良いセカンドだな」と思うだろう。
だから私もセカンドで使っている。
彼は、その場の状況を内野手やピッチャーに伝え次のプレーの準備を促している時がある。
声の少年野球レベルとしては合格ラインにもう少しで到達しそうなところまで来ている。
その声とプレーを合わせると「キレキレの動き」に見えるのだ。
立石が2割5分を打ってくれたら不動のセカンドなんだよなぁ。
(現在5試合を消化して立石の打率は、7打数1安打で1割4分2厘)
内野手は声で指示を出さないといけない。
内外野手との連係プレー、バッテリーへの指示など、必ず声を出さないと内野手としては機能しない。
それは無理にでも出してもらう。
しかし、私はプレー以外の声を無理に出すことを強要してはいない。
強要するとどうしても皆同じような声を出してしまい、その声が揃えば揃うほど民主主義からどんどん遠ざかってしまう印象があるので嫌いなのだ。
余談になるが、練習前にアップで走る時もある程度は選手たちが自発的に声を揃えて出しているが「もっと合わせろ」とは言わないし、ベンチから声を揃えて何かを叫ばすこともしない。
もしも試合中にベンチで応援ソングをみんなで歌い出したら、真っ先に止めるだろう。
私は、声は個性であると思っている。
プレー以外の声は感性であったり、性格であったり、知識であったり、経験が必要になってくるからだ。
無理に出せと言っても「バッター来い!」とか「おりゃー」とか「ピッチャー楽に」などになってしまう。
これはなんちゅうか、試合に影響が少ないレベル1の声なのだ。
そんな声でも出していると緊張が和らいだり、気合いが入ったりする効果もあるので、出さないよりは出した方がましなのだが。
選手の出す声にはその種類によってレベルがある。
指導する側も同じだと思って良いだろう。
簡単に声のレベルを表現すると以下のようなことである。
レベル1
とにかく大きな声を出す。
何でも良い。「さあ来い!」「行くぞ!」「点取るぞ!」など。
レベル2
良いプレー、良いバッティングを褒める。
「ナイスプレー」「ナイスボール」「ナイスサード」「ナイスバッティング」「ナイススイング」「ナイスストップ」など。
これは結果を見て出せる声。
レベル3
プレー中にフィールドで他の野手に声を出し指示をする。
「逃げた!(ランナー走った)」「ボールこっち」「ファースト!」「バックホーム」「ノー(投げるな)」「まかせろ(俺が取る)」「走れ」「ストップ」など。
これはプレー中、瞬時に出す声。
レベル4
状況に応じて次のプレーの指示を出す。
「ランナー走るぞ(盗塁阻止するよ)」「三遊間飛ぶぞ(心の準備をしとけよ)」「バッター左(ライト方面に打球が行くよ)」「バントあるぞ(バントシフトの準備よろしく)」「バッター4番(外野頭越されるな)」など。
これは要するに次に有り得るプレーを想像し野手に準備を促すのだが、この声が出せれば少年野球のレベルでは合格ラインなのだ。
このレベル4は、プレーが複雑になるにつれ成熟していく。
特にキャッチャー、セカンド、ショートは中学、高校でどんどん複雑なプレーをこなしていくのでボキャブラリーは知識とともに増えていく。
レベル5
高校までは真面目にプレーに対しての声を出すだけなのだが、大学からは「愛情を持って味方をヤジる」という新たな声が加わる。
勿論、場面によっては真剣に指示の声を出すが、エラーした時やミスが出た時、頭が真っ白になっている時などはその選手のモチベーションを上げるため、緊張を取るためにヤジるのだ。どうでもいい声も面白ければOKなのだ。ただこれにはセンスが必要なのだが。
例えば大学野球のリーグ戦では
緊張してる選手がいれば「スタンドに彼女来てるぞ!」と「頑張れ」の代わりに言い放つ。
最終回、ピッチャーがアップアップしてるとマウンドに言って「ちゃちゃっと勝って合コン行くぞ」と「楽にいけ」を変換する。
エラーをすれば「グラブが泣いてるぞ~素手で捕った方がましやろ~」など「元気出せ」の代わりににっこり笑ってやる。
練習ではノックをするコーチがミスったりノックが甘いと「ノッカーしっかり打てよ」とか「イージーイージー(簡単簡単)」てなことを言っている。
私はよくファーストでクリンナップの左打者が打席に入ると、ピッチャーに「こっちに打たすな!」と本気で叫んでいた。
左の強打者が引っ張って飛んでくる打球は怖い以外の何物でもない。
プロになると、レギュラークラスで余裕のある選手やベテラン選手は結構あほなことを言っている。
野球のレベルが上がると、声のレベル4とレベル5が成熟してくる。
言い換えれば、野球のレベルが上がると野球の面白さや声の面白さのレベルも上がるのである。
私はベンチからレベル2とレベル5の声を出している。(若干レベル4もあるのだが)
レベル3とできればレベル4までは選手に出させるのがTKドラゴンズの指導方針である。
この声を選手たちが自ら考えて出せるようになると、野球の面白さは加速する。
過去にもあったが、TKドラゴンズのベンチからレベル3の声を出したコーチは退場させられる。
練習で教えておくのが指導者の役割なので、試合中にこれを言うと指導者としての価値は下がる。
これも余談だが、瀬古コーチは試合中、練習中を問わずレベル4とレベル5の声を選手の間近でぼそぼそつぶやいて選手にその声を出さすよう促している。
彼も大学野球の経験者である。
24日の練習時に私がキャッチフライのノックをミスると選手から「しっかり」という声が飛んできたので思わず「ええ声出すがな」と笑ってしまった。
MG情報によると瀬古コーチが選手にぼそぼそ言っていたらしい(笑)
やろうな。
まぁレベル5を子どもたちが自発的に言い出したら、見ていても指導していてもずば抜けて楽しいでしょうね。
これから選手たちがどんな声を出しているか、出す声が日を追うごとにどう変わるか、試合や練習でちょっと聞いてみるのも面白いと思います。
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