バッティングを大きく分けると、狙い球の絞り方、タイミングの取り方、スイングの三つの要素から成り立っている。

この三つを機会があれば少しずつ解説していきたい。

しかし、バッティング理論は様々ある。

言っておくが、ここに記すのは私の個人的な考え方なので、これだけが正解だということはないし、また他にも正解は無数に存在すると思っていただければいい。

 

プロ野球選手を見ても分かるように、同じフォームでバッティングをしている選手はいない。

それだけバッティングフォームというものは個性が出るし、自分の骨格や軸や利き腕によってその形は決まるのである。

選手一人一人に合ったバッティングフォームやバッティング理論は必ず存在し、それを見つければバッティングの考え方は大きく変わるのだ。

私は指導者なので、TKドラゴンズの選手一人一人の個性を見極めてバッティングフォームを修正する。選手のスイングを見ればすぐに最良のフォームをイメージできるのだが、それを選手に伝えることが一番難しいのだ。

スイングは無意識に行っている動作なので、それを意識して修正するためには、私が言っていることを完全に理解してもらう必要があるし、理解しても本気で修正しようと思わなければなかなか自分の物にはならないのである。

実際には小学生の選手たちがバッティング理論を理解するのはかなり大変なので、いろいろ違う言い方でアプローチをして、一番その選手がしっくりくる言い方を継続して言い続けることが多いのだが。

 

いくつか基本的なことがあるので、それを解説したい。

今回は、スイング編1。

 

当たり前だがバットは両手で持つ。

なので両手で打つ。

両手で打つのだが、主にどちらの腕でボールをとらえるかが大事なのである。

ボールにバットを当てる時のかじ取り役の腕をリードと言う。

要するにボールの軌道にバットを導く腕がリードなのだ。

「利き腕で打て」と言うことは、そのかじ取り役の腕を器用な方の手、力のある方の手をリードとして使えということなのだ。

 

昔は、右打者に対して「左手でリードせよ」「その後右手で押し込め」なんて言っていた時代がある。

実に不可解な指導だと思う。

まず右打者はほぼ100%右利きである。左投げ右打ちの選手を私は見たことがない。

右利きの選手は右腕の方が器用でもあり力もある。

ではなぜ、不器用で力の無い左腕でボールをとらえにいくことが基本だ、みたいな考えになっていたのだろう?

右打者のスイングで、右腕が強すぎる、あるいは左腕が弱すぎると、いわゆる「こねる」という打ち方になる。「こねる」とは、バットが波打つ状態のスイングを言うのだが、これを修正するために右打者には「左腕でリードせよ」と言っていたのである。

これが、ある時期スイングの基本だと思われていた。

今でもそう信じている人は多いのだが、これは間違っている。

まず、右打者の場合、不器用な左腕でどこに来るか分からないボールを瞬時に見極め叩きに行って、バットの芯でボールの中心付近をたたける確立と、器用な右手でたたける確率は明らかに利き腕である右腕の方が高確率でバットの芯でボールの中心付近を叩くことができる。

これは当たり前のことを言っているのである。箸も使えない、字も書けない手でボールをとらえに行かない方が良い。

バットが波打たないスイングをしようとして利き腕ではない腕をリードにすると、打率は下がるし飛距離も落ちるのだ。

 

では、右利きの右打者は右腕で打つということになるのだが、当てはまらないケースもある。

体には人それぞれの軸がある。打撃で言う軸とは、どこで回転するか、回転軸がどこにあるかということなのだ。

多くの選手の場合、軸は体の真ん中付近にある。体の左右を分けるラインである。鼻やおへそがセンターラインなのでそのあたりに回転軸がある。

長距離ヒッターに多いのが右打者なら体の右側に軸を持つ選手である。これは腰の右サイド付近に回転軸がある。なぜロングヒッターに多いと言うと、ボールを体の中心よりも右側でとらえるためその分ボールを長い時間見ることができ、器用で力の強い右腕でボールを押し込む、いわゆる「運ぶ」という打ち方ができるのだ。

体の真ん中に回転軸のある選手が、これを真似ても軸が違うので、単なる振り遅れになる。

「右利きの打者は右腕で打て」が当てはまらないのが、右打者で体の左側に回転軸を持っている選手。これは踏み込む左足が軸となるのでスイングする時に、右腕を左足付近まで持って行く必要があるため、どうしてもブレる。走りながら箸でおかずをつかめと言われているようなものなのだ。

この選手は、左打ちに転向することを勧める。左右に関係なく踏み込んだ足に軸が発生するので、左打者になれば踏み込んだ右足に軸が発生する。右腕がリードなので、左のアベレージヒッターに多いタイプである。ただし、現ソフトバンクの松田のように左側に軸を持ち、右腕でリードしながらロングヒッターという珍しいタイプもいるので一概に言い切ることはできないのだが。

 

左打者はこれと逆のことを考えれば良い。

左利きなら左腕でボールをとらえにいくのが良いに決まっている。

 

右利きの左打者は実に多い。

私もその一人である。この話は、スイング編2で触れる。

イチローの影響でなんでもかんでも左打者に転向させるケースが15年ほど前からしばらく見られたが、これは日本の打撃の発展を完全に妨げたと私は思う。

お蔭で現在、右のスラッガーがほとんどいなくなってしまった。西部ライオンズの山川と中村ぐらいだろうか。好打者はほとんど左打者になってしまった。

ほどほどの左投手が大量にプロ入りする原因にもなっている。

慌てて右のロングヒッターをどの球団も取り出したが、元に戻るまであと10年以上は時間を要するだろう。

右打者が右手で打つホームランは魅力的である。

 

TKドラゴンズには左利きの左打者が一人いる。

この選手は、入団してきたときは右手をリードとして使っていたのだが、昨年から左手をリードに変える指導をした。

打球の力強さは見違えるほどになった。打率も文句ない。しかし、まだ回転軸がしっかり分かっていないので今後指導をしていくが、なかなかそういうことは自分では気づかないものだし、バッティングというのは本当に難しいものだと思う。

 

ここで覚えておいてほしいことは、

自分の利き腕と回転軸を知っておくこと。これがバッティングを向上させるための大きなポイントになる。ということ。

 

 

  • 次回は軸についてもう少し詳しく解説する予定です。