先日行われた第5回きぬかけ杯夏季大会では、TKドラゴンズが優勝し2連覇を達成しました。
少し時間がたちましたので、リアルな感じではなく、今大会のTKドラゴンズがどんな戦略でどう戦ったのかを解説しながら振り返ってみたいと思います。
あ、書きたいことが多すぎて恐ろしく長文になってしまいました(笑)休憩しながら読んでくださいね。
1回戦
京都ルーキーズ 0 0 0 0 0 0
TKドラゴンズ 1 3 2 4 X 10
(勝 吉村 4勝2敗、 本塁打 宮田1号、吉村2号)
宮田・立石・吉村、ノーヒットノーランリレー!
以前のブログにも書いたように、きぬかけ杯でのベンチの最大の仕事は継投でした。
投手陣の頭数は足りていませんでした。
7月に入り青山空の調整が進まず、彼のきぬかけ杯での登板は回避したため、きぬかけ杯の投手陣は宮田、立石、吉村の三人。
この中で5回を投げ抜くスタミナがあるのは吉村だけでした。
宮田は50球でバテることが7月の試合で判明していましたし、立石はコントロールも良くスタミナもありますが、吉村・宮田よりも球速が遅いため上位打線に捕まるリスクがありました。
吉村を先発させれば、その試合に勝てる確率は高くなりますが、もう一つの試合を落とす確率も上がります。
そこで2試合ともに、立ち上がりが安定している宮田を先発、コントロールの良い立石をセットアッパー、速球が決まれば打たれない吉村をクローザーという順番で戦うことを決めました。
問題は宮田の投球数でした。50球が限界ということは1試合25球程度です。持って1試合2回まで。
このデータから、宮田を先発させ6番まで。立石を7、8、9番の下位打線に当て宮田と吉村の投球数をできるだけ温存。打者2巡目から吉村をロングリリーフ。得点差次第では2巡目の下位打線に再び立石。
このように打順によって担当を決め、イニング途中でも継投するという戦略を立てていました。
結果はどうなったかというと・・・
1回表、先発宮田が三者凡退2奪三振。
2回表、宮田4、5、6番を三者凡退。打者6人をパーフェクト!投球数25球。
3回表、立石7、8、9番を三者凡退1奪三振。打者3人をパーフェクト!投球数13球。
4回表、吉村1番をレフトフライ。2番に死球。ここでパーフェクト(完全試合)はなくなります。3番の打席で走者が盗塁を試みるが捕手宮田がセカンドへストライク送球!アウト!3番を三振にとり結果的に三者凡退。1奪三振。
5回表、吉村4、5、6番を三者凡退。投球数24球。試合終了!ノーヒットノーランリレー達成!
ここまで思い描いていた通りの継投ができるとは思っていませんでした。3人が本当に良く投げてくれました。
3人の投手が自分の役割を理解し、完璧な仕事をしてくれました。すごい!
宮田に関しては2試合ともに先発を任されながら、長くとも2回で役目を終えるため試合に勝っても勝投手になる可能性はほぼゼロです。
そんな条件でモチベーションを保って投げてくれた宮田には感謝しかないです。普通の投手なら怒りますよ。
立石には「6回に突入すればもう一回行くぞ」と言ってありました。下位打線限定で守ったり投げたり守ったり投げたり・・・よく難しい役割をこなしてくれました。
吉村は24球。彼の体力ならあと45球前後は大丈夫。決勝戦にロングリリーフできる形を整えることができました。
彼に対しては前週から「きぬかけ杯では70球は覚悟しておいてくれ」と言ってありました。
打線も少し入れ替えていました。
1番 調子が上向きでチャンスに強く出塁率の高い青山航。
2番 出塁率が高くロングヒットのある宮田。
3番 打率、出塁率ともにチームトップ、チャンスに強くロングヒットもある立石。
4番 チャンスに強く一発のある吉村。
5番 登板がなくなりモチベーションが下がるか、気楽に打てるか一か八かで青山空。
6番 データ上は5番が適任だが経験の浅い杢谷。
7番 打撃は下降気味だが、しぶといバッティングの森。
8番 打撃は低調だが足とセンターの守備を買い上川。
9番 守れば簡単な打球しか飛んでこない、大事な時に意外と打つ、不思議な力を持つ古我。
1回裏、1番青山航が四球で出塁、3番立石センターオーバーのタイムリー3ベースで1点を先制。
1番青山航、3番立石が期待通りにやってくれました。打順の入れ替えが功を奏し先制します。
2回裏、2アウト3塁で9番古我。1ボール2ストライクと追い込まれます。打てない雰囲気です。
試合の流れを掴むためにはどうしてもここで2点目がほしかった私は、タイムをかけ古我に耳打ちし魔法をかけます。
「右手でボールを掴むように打てば打てる」
「はい!」
このタイミングでタイムをかけるのは通常ではないことですが、いわゆる「ひらめき」というやつです。
ひらめいたときは迷わず実行する。これが大一番で勝つための鉄則です。
手とバットが一つになるイメージを古我が一瞬でも持ってくれれば可能性はある!という「ひらめき」でした(笑)
深く考えず言われた通り右手で打ちに行った古我。
レフトへタイムリーヒット!良く打った古我!
この古我のヒットは大きかったです。
この2点目で選手たちの緊張がほぐれました。
1番青山航、センターオーバー!タイムリー3ベース!
2番宮田、センターオーバー!タイムリー2ベース!
2アウトから3連続タイムリー!3点追加!
一気に流れを掴んだTKは4回裏、2番宮田がセンターオーバーの1号2ランホームラン!4番吉村が左中間を破る2号ソロホームラン!
ダメ押しの4点を追加し試合を決めてくれました。
全9安打中1番から4番が7安打。上位打線が機能し得点を重ね決勝へと勝ち上がることができました。
[su_spacer size=”40″]決勝戦
TKドラゴンズ 2 1 3 0 0 6
上鳥羽友愛ジュニア 1 1 0 1 0 3
(勝 吉村5勝2敗)
青山航、優勝を決めた走者一掃3ベース!
今年は練習試合をする時間もなかったため、各チームの戦力分析は全くできていませんでした。
ぶっつけ本番です。
上鳥羽友愛ジュニアとアカスポの1回戦が唯一の情報源でした。
上鳥羽が8-0で完勝しましたが、この試合で「上鳥羽の上位打線は手強い」という印象を持ちました。よく振れていましたし、飛距離も出ていました。
特に背番号1番の選手は要注意でした。
選手達には1回戦でも言いましたが、決勝戦の前にも同じことを言っています。
「緊張感を持って、集中して、楽しんでやれ!結果はついてくる」
決勝戦という大一番を勝つためには、選手達が自分の力を9割がた発揮できるかどうかが最も重要な要素なのです。
戦うのは選手です。決勝戦で緊張するのは当たり前。ベンチのできることは、いかに気持ちよく、自由に、楽しく、集中して、選手達に野球をさせることができるかということなんです。
よく見てもらうと分かるんですが、ベンチは勝つためにいろんなことをやっています。
暑いので、1回戦からスタメンはベンチの日陰に座らせています。
無駄に体力を奪うことはチームにとってマイナスです。根性もくそもありません。
無駄な円陣もありません。
この日2試合通して、守備が終わった後に円陣を組むことは一度もありませんでした。
私が選手を集めて円陣を組ませるときは、相手投手の狙い球を指示する時。あとは負けている時に萎えかけた心を鼓舞する時だけです。
試合中に全員に出す指示は、少ない方が効果的です。
その代わり、選手個々に対しては、いろんなことを言っています。
一番多いのは投手起用に関することですかね。
投げ終わった投手に「お疲れさん、よく投げた」
次の投手に「次行くぞ」「何回まで行くぞ」「何球で変わるぞ」「何番まで行くぞ」などなど。
その言葉で、次の投手はベンチの横で肩を作り始めます。
代打でも言います。
「次の回行くぞ!用意しとけ」
この言葉で、その選手はバッテをはめ、メットを被り、バットを持ち代打に備えます。
全ては、選手に心の準備をさせるため、プレーをねぎらい次の役割に気持ちよく向かわせるために言っています。
試合中はめったに選手個人の技術的な指導は行いません。いきなり治らないですし。
大一番では、何よりも選手に気持ちよくプレーさせることが大切なんです。
それと、勝ちに行っている公式戦では選手を叱ることはないです。できるだけにこやかにしています。
普段は難しい顔で文句ばかり言っているんで、選手たちは驚いていますが、リラックスはできます。
あ、杢谷だけは叱りました(笑)彼は今シーズンは叱られます。
さて、いよいよ決勝戦です。
[su_image_carousel source=”media: 4702,4703″ slides_style=”minimal” crop=”3:2″ align=”center” max_width=”600px” link=”lightbox” image_size=”medium_large”]1回表、2アウト満塁とし6番杢谷が押し出しの死球をもらい1点を先制。
この試合7番に上げた古我も四球を選び2点目。タイムリーなしで、ぐしゃぐしゃ~と2点を先制できたのは大きかったです。
1回裏、先発宮田。
上鳥羽は1番に背番号1の要注意選手を持ってきていました。
ただ、ここでは宮田、吉村のバッテリーには何も情報を入れていません。
前週の練習試合で宮田に「この打者要注意。コースを狙って打ち取れ」という指示を出した時に、フルカウントからファウルで粘られ10球も費やした揚げ句に四球を選ばれ、その打者に力を入れて投げた分、体力が尽きるという場面があったんで、「打たれるならさっさと打たれても良い」と思っていました。終盤もつれた時にこの打者に廻ってきたらマークさせよう、くらいに思っていました。
で、ホームランを浴びます。1点返されますが、ランナーが残らず2番から仕切り直せる状況になったのは幸運でした。
宮田はその後の2、3、4番を三人で退けてくれました。
2回表、先頭9番上川が内野安打で出塁し2盗。1番青山航のファーストゴロで1アウト3塁。
2番宮田のセカンドゴロで上川が突っ込み追加点。
上川の足が生きた渋い追加点で2点差。
2回裏、宮田が5番に甘く入った初球をレフト前にヒットされます。やはり上鳥羽の上位打線は間違いなく手強いです。
6番をセンターフライに打ち取ったところで、予定通り立石にスイッチ。
7番に四球。イニングの途中の投手交代は、肩を作る時間が少ないため、こういう可能性はあります。
立石には「1点は取られても良い」と言ってありました。
8番のショートゴロで3塁ランナーが突っ込みますが、ショート宮田がバックホームで刺します。2アウト。
「これで凌いだ」と思ったのですが思うとやられます。
立石がマウンドに上がる場合は宮田がショートに入ります。守備に問題はないのですが、練習時間の加減で若干、連携に不安がある布陣なんです。
こういう時にその不安要素が出るものです。
2アウト1塁3塁から1塁ランナーが当たり前のように盗塁を仕掛けてきます。
こういう場合、普通は盗塁を放っておくのですが、TKでは盗塁を刺しに行き3塁ランナーがホームへ走ればショートがカットしてバックホーム、3塁ランナーが走っておらず盗塁を刺せるタイミングならスルーしてセカンドで刺す、という練習をしています。
なので吉村はセカンドに送球。セカンドで刺せるタイミングではなかったので、セカンドベースに入った森は「宮田がカットだ」と思ったでしょう。宮田は完全にこのプレーが頭から抜けていたか3塁ランナーが走ってなかったので良いと思ったのか、カットせずスルー。慌てた森がファンブルしている間に3塁ランナーがホームインして1点差となります。
これは練習時間の少なさからくるミスですが、仕方ないでしょうねぇ。
吉村と森は練習通りやってくれています。宮田も打者6人に対し精一杯投げた直後なので責められないですし、集中していなかったわけではありません。
実は吉村はセカンド送球する寸前で力を緩めています。おそらく、ショートの宮田と目が合わなかったんだと思います。宮田がカットするつもりなら、吉村が送球動作に入った時にはショートと目が合います。吉村は周りの反応を敏感にとらえていますので、野球に関する嗅覚は鋭いと思います。
1点は返されましたが、その後は立石が9番打者を打ち取り3アウト。
2回を終わり3-2。1点リードして吉村に託す準備が整いました。
3回からでも4回からでも、1点でもリードした状態で吉村につなぐことが優勝への条件だと思っていました。
3回表、先頭6番杢谷がレフト前ヒットで出塁。
7番古我は四球で出塁。
1アウト後9番上川が内野安打で出塁。
1アウト満塁のビッグチャンスが訪れます。このチャンスをものにすれば栄冠に一気に近づきますし、ゼロで終われば流れは変わります。
この勝敗を左右する大きな場面で打席に立つのは、この試合2打席ヒットが出ていない1番青山航。
チャンスに強い選手です。
青山航を信じて見守るのみ。
フルカウントからの5球目をよどみなくスイング!
ドンッ!ボールの芯を捉えた感触が伝わる!
打った!ライトへ!
その瞬間、打球がライトの頭上を一気に超えた!
よっしゃー!
満塁の走者が走る!まず古我がホームイン!森も帰ってくる!上川がホームを駆け抜ける!
3ベース!走者一掃~!3点追加~~!
よく打った!青山!
この日4安打した青山航ですが、この1本だけでも優秀選手賞の価値があります。それだけ大きな意味を持つ一打でした。
3回裏、マウンドへ吉村が向かう。
1番からの上位打線。1番にレフト前ヒット。良く打つ。
けん制悪送球で0アウト2塁。しかし、このランナーをけん制で刺します。ショート立石からのサインプレーですが良いタイミングでした。
その後、2番3番に連打を浴び1アウト2塁3塁で4番打者。本当に良く打つ。
ここは正直なところ、4番5番のどちらかにタイムリーを打たれて「2点は返される」と覚悟していました。
それでも2点差。この差で逃げ切ることを考え始めていたんです。
で、4番が予想外のスクイズ!
上鳥羽のスクイズは試合前から警戒しており、スクイズを外すことも打ち合わせていましたが、完全にノーマークでした。ただ低目のボール球を空ぶってくれました。助かった・・・
3塁ランナーあえなくタッチアウト。結局4番をセカンドフライに打ち取り無得点でこの回を切り抜けます。
これは大きかったです。終盤もつれることを覚悟した途端でしたから本当に助かりました。
4回裏、上鳥羽5番3ベース。本当に良く打つ・・・
内野は定位置。1点取らせてアウトを重ねる指示です。ショートゴロで1点取られますが、この回を予定通りの1失点で終えます。
5回裏、エース吉村が栄光へのマウンドへと向かう。
[su_image_carousel source=”media: 4712″ slides_style=”minimal” crop=”3:2″ align=”center” max_width=”600px” link=”lightbox” image_size=”medium_large”]2試合で吉村が投じた球は46球。余裕はあった。
1番、初球をキャッチャーフライ、2番初球をライトフライ。
3番にはこの日のMAXが出ていた。速球でグイグイ押しまくる!三振!
三者凡退!
タイムアップ!!
試合終了~!
・・・・・!
勝った・・・優勝~!
優勝の瞬間、意外と選手達は冷静でした。「あれ、終わったの」みたいな感じでした(笑)
でもやり切った顔をしていました。
良い顔をしていました。
おめでとう。
よくここまで頑張りました。
選手達が自由に輝き、そして優勝を勝ち取ってくれました。
ありがとう。
さて、次の目標に向かってスタートです!
[su_image_carousel source=”media: 4713,4714″ slides_style=”minimal” crop=”2:1″ align=”center” max_width=”600px” link=”lightbox” image_size=”medium_large”]【表彰選手と選出理由】
最優秀選手賞・・・吉村
2試合合計5回1失点で2勝をあげ、エースに相応しい好投。打撃では3安打1本塁打2打点と4番の役割を果たす。文句なしの活躍。最優秀選手賞初受賞。
優秀選手賞・・・青山航
2試合合計4安打(2塁打2本、3塁打2本)4打点の活躍。決勝戦の走者一掃3ベースは優勝を決める価値ある一打となる。優秀選手賞初受賞。
優秀選手賞・・・宮田
2試合合計3回1/3 2失点で先発投手の役割を果たす。打撃では2安打1本塁打3打点。捕手でも好プレーを連発。優秀選手賞初受賞。