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「会長のひとり言3」~プレー中に指示することの罪~

もしもプレー中に指示を出してその通り動けたなら、その子はスーパーコンピューターより処理能力が高いことになる。
少年野球の試合で気になることは多々あるが、中でも一番滑稽なのがプレー中に指示を出す監督、コーチが意外と多いということである。

一つ例を出してみよう。
1アウトランナー三塁でサードゴロ。ランナーは突っ込む。タイミングはセーフ。捕手からの指示は無い。前進守備を敷いていたサードは捕球の体勢に入っている。
そんなときにベンチから「ファースト!」という指示が出る。三塁手はファーストに送球したが打者走者はセーフ。

この状況で間違いが二つある。

まず、野球は、というか多くのスポーツがそうだと思うが、プレー中は自分の判断が全てなのである。
自分が与えられている役割に対しては自分が瞬時に判断してプレーする。
捕手から指示の出なかったこの場合、三塁手はバックホームするつもりで捕球体勢に入っている。そんな時に「ファースト!」などと言われたら、一旦ホームに踏み込んでからもう一度体勢を整えて一塁へ送球するのだからセーフになるに決まっている。

だいたい、ベンチから指示をしてたんでは間に合わないのが普通である。
しかし、間に合わないのが悪いわけではない。

最大の間違いは ➡ プレー中の子どもの判断を妨げる声を出してしまっていること。

プレー中に指示された瞬間に選手の体が動くとでも思っているのだろうか。
ひどいのになると打者に向かって、投手が投げた後に「振れ!」とか言っている。
そんなことができるのなら、打つ瞬間に「ホームラン打て!」と言えば楽で仕方ない。

プレー中に指示してしまうと、子どもたちは指示を待つようになる。
ボールを捕球してベンチを見てから送球している子どもを見たことがある。
こうなると、判断力や瞬発力はいつまでたっても育たない。
例えプレーヤーの判断が間違っていたとしても、プレー中に指示することは子どもの成長を著しく妨げてしまうのだ。

一瞬の判断力、瞬発力がなければ最高のパフォーマンスなどできない。
試合でフィールドに立っている選手が自分の判断で動くことを教え、体にしみ込ませるために練習をするのが指導者の役割の一つである。
その練習の成果を試合で確認することが次のステップへとつながるのである。

プレー中に指示するということは自分が育てた選手を全く信用していないことの表れであるし、「私が行った練習が間違っていました!」「全然役に立たないことを教えていました!」と声高らかに公の場で言ってしまっていることになる。
まったく・・・

私は、高校・大学と一応本格的に硬式野球をしてきたが、プレー中に指示をされたことなど一度もない。
まぁ、もしそんなことされていたら・・・「こいつあほか」と思っていたでだろう。

次に、野球経験者なら誰でもわかると思うが、送球の方向を指示するのは捕手である。
ランナーと打球と守備の全てのタイミングを瞬時に見て判断するポジションである。
捕手から指示が出ないとボールしか見ていない野手には判断がつかない場合がある。

間違いの二つ目 ➡ 捕手に送球方向を指示せよという指導をしていない指導者が間違っている。

万が一どうしてもベンチから言わなければならないのなら、サードにゴロが飛ぶ前に「キャッチャー、指示しろよ!」だろう。まぁそんなこと言っても練習していなければなんの効果もないが・・・

私は、練習試合であろうが公式戦であろうが、試合は練習の成果を見る発表会だと思っている。
プレー中に指示するくらいなら練習しておけば良い。練習していないのなら、その場では言わず次の練習でしっかり指導すれば良いのだ。
試合の結果や内容は、指導者の成績表みたいなものである。
成績を受け止め向上させることが指導者なのではないだろうか。

誰のために指導しているのかわかってさえいれば簡単なことである。
子どもの為に指導しているのである。
勝って自分の成績を上げたいから指導しているわけではないのだ。

ただ・・・勝って飲む酒はうまい。それは間違いない。
だから私は、「勝って飲む酒は子どもたちからのご褒美だ」と思っている。

TKドラゴンズにも、プレー中にベンチから指示してしまうコーチやスタッフがいる。
その都度注意するが、特にコーチはこっぴどく私から叱られる。
TKドラゴンズでは、プレー中の指示は厳禁なのだ。これに反するとベンチから退場させられることもある。
コーチが憎いわけではない。子どもたちの成長の妨げになるから仕方がない。

特に我が子に指示するケースが多いが、残念ながらこの行為は、その大切な我が子に足かせを付けて動けなくしてしまっているに等しい。
我が子が可愛いなら、じっと信じて眺めてやることをお勧めする。

ちなみに、フィールドに立つ選手を怒ることもTKドラゴンズでは厳禁なのだが、その理由は、また折を見てお話しすることにする。

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