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「会長のひとり言2019」~学生アルバイトコーチ・未来の指導者のために~

先日、TKドラゴンズの4期生で五代目主将を務めた牟田君(大学ニ回生)がアルバイトコーチの面接に来てくれた。

もちろん合格なのだが、その日は練習試合だったので、2試合観戦してもらった上で、チーム方針の説明を少しして、本人の意思を確認させてもらった。

彼が巣立って行った8年前のTKドラゴンズとは団員数も違うし、環境も違う。その辺を説明する必要があった。

牟田君も「やりたい」とのことだったので、3月の末から本格的にコーチとして来てもらうことになった。

ホームページからの応募だったのだが「自分を育ててくれたTKドラゴンズに少しでも役に立ちたい」という熱いメッセージが添えてあった。

私は、私の教え子がいつかチームに戻ってきてくれることを楽しみにしていたし、教え子が帰ってくる場所を消滅させてはならないと今まで思ってやってきた。

いつかOBが親となって、その子どもと一緒にチームに帰ってきてくれることを楽しみにしていたのだが、それより先に学生コーチとなって帰ってきてくれたのだ。

思いがけなくその時が来て、今じわじわと喜びが込み上げてきている。

彼は中学生、高校生の時に何度かグラウンドに顔を出してくれていたので、立派に成長している姿は見ていたのだが、大学生になった彼は一段と精悍な顔つきの青年になっていた。

彼は確か小学校2年生か3年生の時にTKドラゴンズに入団してきてくれた。その当時で思い出すのは、何かが思い通りいかなかったのだろう御所の木を泣きながら蹴っていた彼の姿。

あんなに小さかったのに(笑)子どもの成長は本当に早い。

現在Fチームの監督をしている千葉君(大学二回生)も同い年。同い年の学生コーチが二人揃った。

しばらく、同い年のこの二人にコーチをしてもらうことになる。二人とも良い青年なんで楽しみです。

さて、ご存知の通り、TKドラゴンズでは学生アルバイトコーチを採用しています。昨年は二人の学生コーチを卒団させました。学生コーチ1期生です。

普通のチームではあまり聞きませんね。

ほとんどの少年野球チームは保護者がボランティアでコーチをするのが普通だと思います。

TKドラゴンズでも保護者の方にボランティアでコーチをお願いしています。

最近では塾のようなチームもありますが、その場合の指導者は、ボランティアではなく仕事ということになります。

TKドラゴンズでは、グラウンドでユニフォームを着用している方が私も含めた指導者なのです。

少年野球の指導者というのは、子どもたちに進むべき道を指さし導く役割を担っています。その導く先、導き方についてはチームとして一貫性を持っていなければなりません。

コーチそれぞれが、バラバラなことを指導することは個性ではなく無秩序なことです。子どもたちは誰の言うことを聞けばいいのか迷ってしまいます。

ある程度の経験と知識を持っていただいている前提で、私が指導者としての心構えや指導方針などを統一させていただいているのです。

私は子どもたちに「チームワークを大切にしなさい」という指導はしていませんし、ホームページの指導方針にも掲載していません。これについては、またの機会に申し上げることにします。

ここで言いたいことは、子どもたちよりも指導者のチームワークが大切だということなのです。

指導者の一貫性やチームワークを重視して行っているのが月例のミーティングです。無駄な話も多少はしますが、ほとんどの時間を割いてチーム方針について話し合っています。

参加した指導者やスタッフからは、積極的な意見が飛び交います。私の意見と反対の意見もよく出ます。多くの意見が出され、それを議論し、吟味し、集約して最終的なチームの方針を固めていくのです。

なぜ、スタッフから多くの意見が飛び交うのかということについては、不思議だと感じる方も多いと思いますが、これもいつか申し上げたいと思っています。

さて、アルバイトコーチの話に戻します。

ボランティアではなく、アルバイトという理由については、責任を感じてもらうこと、手伝ってあげているという意識を持たないこと、少しでもお小遣いになること、募集しやすいこと、親の負担やストレスを軽減することなど・・・たくさんあります。

もうひとつ、アルバイトコーチを採用する大きな理由があります。

私は、子どもたちの指導と並行して少年野球の指導者の育成をするべきだと強く感じています。

この時代においても、まだ化石のような野球を指導しているチーム、根性論を振りかざして根拠のない精神指導をしているチーム、練習より試合で上手くさせようとしているチーム、勝つことしか考えていないチームなどが存在します。記憶に新しい所では、プロ野球選手が勝利至上主義に一石を投じています。

しかし、それでも尚、このような指導がまだ続いており、変えようと思ったり間違っていたと思う指導者が少ないのが現実のような気がします。

この現実の根底には、指導者が指導者たる教育を受けていないという大きな原因があると思うのです。

昔の近所のおっさんがそのまま今に至っている指導者。自分が指導された野球を忠実になぞっている指導者。いずれにおいても自分の考えが一番正しいと思っている指導者なのです。しかし、その多くが野球理念や野球理論、指導理念や指導理論を考えずに、指導を受けずに、または研究せずに指導してしまっているような気がします。これを改善するためにはもっと根本的なことから改善する必要があるはずなのです。

私は、学生時代から指導者としての教育や指導を受けることで、野球や指導の理念や理論をしっかり持ち、その上で、時代に即した考え方やトレーニング方法などを取り入れていける柔軟性、優れた理念や理論を取り入れる謙虚さや研究心を身に付けることができると思うのです。

そして、自分が一番正しいと思ったら指導者としては終わりだと思うことができると思うのです。

技術指導だけが指導者の役割ではありません。

TKドラゴンズの学生コーチは、よく私に「どうやったら子どもたちは僕の言うことを聞いてくれるんでしょう」という質問をしてきます。

まず指導者としてぶち当たる壁がそれなんです。

それを力ずくで聞かせてしまう大人が多いのも事実でしょう。子どものうちは表面上は従います。しかし、子どもは大人が思っているより賢いですし、本能で自分の身を守ります。大人は自分に従っているのだと勘違いをしているだけなのです。

その質問に対して、私は学生コーチにこう言います。

「君が子どもやった時のことを思い出してみ。どんな大人の言うことを信用した?

優しい人?面白い人?言っている内容が分かりやすい人?・・・どれも違うと思うんや。

君が信用した人は、多分、君のことを正面から見ていてくれた人ちゃうか?君のことを一番に考えてくれた人ちゃうか?

それが例え怖い人であっても、他のみんなが嫌っている人であっても、自分のことをちゃんと見ていてくれる人やったんちゃうか?もちろん親もその中の一人やな」

私は、指導者の根本はそこにあると思うのです。

可愛いと思うから叱るし、可愛いと思うから教育するし、可愛いと思うから一番良い方法を考え出そうとする。

可愛いと思うから、その子のことをいつも見ているのです。

私は、技術や理論や理念、その全てを学生コーチに与えたいと思っています。

今後、TKドラゴンズから巣立っていく学生コーチが、将来指導者になった時には、私の指導理念の基盤を受け継ぎ、その基盤の上に自分の経験や世の中の流れを取り入れることで指導者の進化が発生すると信じています。

今踏み出したその一歩はとても小さいものですが、必ず将来それが枝葉となって広がり、大きな実りを未来の子どもたちに授けてくれると思っています。